自社のホームページを制作したいと考えた時、自社にホームページ制作が可能な部署及び人材がいる場合には自社で制作することになりますが、そういった部署及び人材がいないという場合には、ホームページ制作をベンダーに依頼することになります。ホームページ制作に必要な様々な工程を知らなければ、見積書の妥当性がわからず、高いのか安いのかといったことも判断がつかないでしょう。
本記事では、ホームページ制作の見積書についてフォーカスし、見積もり依頼前にやっておくべきこと及び注意するポイント等についても解説致します。
ホームページ制作の費用目安
ホームページ制作をベンダーに依頼検討する前に、ホームページ制作の費用目安について理解しておくことが大切です。基本的にホームページ制作費用は、サイトの規模(ページ数)や、オリジナルデザインか否か等によって大きく左右されます。一概にいくらとは言えませんが、費用の目安を下記表にまとめましたので参考にしてみて下さい。
制作内容 | 費用目安 |
テンプレートデザイン | 30,000〜100,000円程度 |
テンプレートを元に一部カスタマイズ | 200,000〜300,000円程度 |
オリジナルデザイン | 200,000〜1,000,000円以上 |
WordPress設置 | 30,000円〜 |
ECショップ | 500,000円〜 |
独自システム構築 | 1,000,000円以上 |
ホームページ制作の見積もりの特徴
ホームページ制作の費用感について認識したところで、ホームページ制作の見積もりの特徴についても押さえておきましょう。ホームページ制作に取り掛かる前の段階では、基本的に最終的な成果物がわからないと言っても過言ではありません。何故なら、ホームページには全く同じものは存在せず、無形の商材であるからです。
実際に成果物ができるまでは、クオリティはおろかページ数は確定せず、さらにホームページが実際に企業にもたらす影響についても試算することしかできないのです。そのためベンダーは、漠然とした中でも経験値から見積もりを算出します。
ベンダーによる価格設定方法
ベンダーによるホームページ制作の価格設定方法には、様々な方法がありますが、ここでは代表的な次の3つの設定方法について解説致します。
- 作業項目ベース
- ページベース
- 工数ベース
作業項目ベース
ホームページ制作の工程を細かく分類すると膨大な作業項目が存在しますが、想定される作業項目においてそれぞれのミニマム単価を設定しておくことで、ミニマム単価×数量により見積もり金額を算出します。
作業項目ベースで見積もり金額を算出すると、クライアント目線ではとても詳細に金額が提示されるためわかりやすいというメリットがありますが、一方で見積書が見づらくなってしまったり、仕様変更及び修正等が発生した際に追加の費用が必要となってしまうというデメリットがあります。
ページベース
ページベースの場合には、ページの内容を問わず1ページ単位で見積もり金額を算出することになります。こちらもクライアント目線では、専門的な用語等も少なくとてもわかりやすい見積書となりますが、具体的にどのような作業のためにこのページ単価が算出されているのかわからないという不明瞭な点も存在するのがデメリットです。ページ数が多ければ多いほど、ページ単価は下がっていく傾向があります。
工数ベース
工数とは、各作業項目における必要となる時間のことであり、エンジニア等の人員を作業に当てるために必要な人件費のことを工数単価と言います。ベンダーによって、所属しているエンジニアの経験値や得意分野、人数が異なるため、工数単価にも差が出てくることが特徴です。経験値の高いエンジニアをたくさん投入すると短い納期で制作できるため比例して工数単価は高くなり、経験値の低いエンジニアを同人数投入すると工数単価は低くなりますが、その分納期が長くなることが予想されます。
他の見積もり方法とは違い、クライアント側からみてわかりにくい見積書となることが多いですが、工数内で収まる範囲であれば、追加料金なしで急な仕様変更及び修正等に柔軟に対応することができるというメリットがあります。ただし、成果物に対して不確定要素が多ければ多いほど、ベンダーはあらゆるリスクを想定しあらかじめスケジュール等も余裕を持った見積もりを算出することから、他の見積もり方法よりも高い金額が提示されやすいといった傾向があります。
ホームページ制作見積もり依頼前にやっておくべきこと
ベンダーにホームページ制作の見積もり依頼を行う前に、クライアント側としてもやっておくべきことがいくつか存在します。クライアント側で決めておかなければ、ベンダーもより正確な見積もりを算出するのが難しくなるためです。本項目では、クライアントがやっておくべき次の3つのことについて解説致します。
- 目的の決定
- 予算の設定
- 納期の設定
目的の決定
そもそもどのような目的をもってホームページを制作したいのかを明確にしておく必要があります。目的については、「自社ホームページを多くの人に見てもらいたい」というざっくりなものではなく「お問い合わせフォームからの問い合わせを増やしたい」だったり「中途採用の応募者を増やしたい」といったような具体的なものであると、ベンダーもデザインやページ構成等についてよりよい提案がしやすくなります。目的が明確であればあるほど成果物についてのイメージもしやすくなり、迷走することもなくなるでしょう。
予算の設定
ベンダーから見積もりをもらう前の段階で、予算をいくらまで算出できるのかということも自社内で話し合っておく必要があります。前述した費用目安を参考にしつつ、自社で制作したいホームページにどれだけ予算をかけることができるのか、成果物が納品された後の費用対効果及びランニングコストについても考慮しておきましょう。
納期の設定
完成したホームページをいつから閲覧できるようにしたいのかという日程についても目処をつけておく必要があります。日程が迫っていればいるほど見積もり料金も高くなるという傾向があるため、ある程度の余裕を持った納期をベンダーに提示できると良いでしょう。
ホームページ制作の見積書
制作するホームページの種類や規模、オリジナル性の追求、さらには制作依頼するベンダーによって見積もり金額や見積もり方法は変わりますが、本項目では、作業項目ベースで見積もりが算出される場合に想定される各作業項目について概要を解説致します。
企画構成費・進行管理費
企画構成費や進行管理費は、ディレクション費とも呼ばれており、ベンダー側のディレクターの稼働費にあたります。ディレクターの担う業務は多岐に渡り、プロジェクト完遂のためには必須の存在です。クライアントと綿密にやりとりしながら要件定義を行なって提案書を作成し、納期までのスケジュールの管理やエンジニアの選定等も担います。
ホームページ制作において、企画構成費が占める割合はどうしても大きくなってしまうと言われており、ベンダーによっては「全体金額の〇〇%」といった提示を行う場合もあります。
分析
ホームページ制作を行う際には、現状の分析を行いホームページに盛り込むべき項目を明確にする必要があります。特に新規でホームページ制作を行うのではなく、既存のホームページをリニューアルするといった場合に考慮されることが多いです。
調査
クライアントの希望するホームページと類似しているホームページの傾向についてや、クライアントの競合企業の展開しているホームページについて調査を行うことで、クライアントのホームページに取り込むべき内容を掴むために、調査費用も請求される場合があります。
KPI・コンセプト
KPI設定やコンセプト設定についての費用がかかる場合に記載される項目がKPI・コンセプトです。この項目には、前述した分析や調査費用が含まれる場合もあります。
サイト設計
サイト設計は、ホームページを制作するために必要なサイトマップ及びワイヤーフレーム等の作成に必要となる費用項目です。サイトの規模が大きければ大きい程高い費用となります。
サイトマップ
ベンダーによっては、サイト設計をさらに細かく分類し、サイトマップという項目を設けている場合があります。サイトマップは、ホームページ全体のページの構造が一目でわかるもので、必ず作成が必要となるものです。
ワイヤーフレーム
ベンダーによっては、サイトマップと同様にサイト設計をさらに細かく分類し、ワイヤーフレームという項目を設けている場合があります。ワイヤーフレームは、ホームページ内のそれぞれのページのレイアウトであり、必ず作成しなければならないというわけではありませんが、一般的に最低限トップページ等の主要となるページについては作成することが多くなっています。
デザイン
ホームページ制作におけるデザインは、見本イメージを制作することも含め、ホームページの中でも重要なトップページ等の完成見本であるデザインカンプや試作品であるモックアップを制作することを言います。全てのページのデザインカンプ及びモックアップを制作することは少ないですが、どのページもオリジナルデザインで作るのか、ベンダーが持っているテンプレートで作るのかによって費用に大きく差が出てしまいます。
コンテンツ作成
コンテンツ作成とは、ホームページ制作に使用する画像及びテキスト、動画等の要素の制作のこと全てを包括していることが多く、制作する要素が多くなれば多くなるほど高くなる傾向にあります。
イラスト
コンテンツ作成をさらに細かく分割するベンダーの場合、イラストという項目があることがあります。ホームページ制作において、デザイナーによるオリジナルイラストを作成する必要が生じた際、発生する項目です。
作図
作図もコンテンツ作成に含まれる時と含まれない時があります。イラストと似ていますが、テキストやイラスト及び画像だけでは伝わりにくいような情報がある場合、ベンダー側で作図を行うといった時に発生する項目です。
撮影
撮影に関しても、コンテンツ費に含まれることもありますが、ベンダーにおいてホームページ内に掲載する画像及び動画を撮影しなければならないという時に発生します。
ライティング
ライティングは、コンテンツ費に含まれることもありますが、ホームページ制作においてユーザーの目に触れる文章を作成することを指します。ベンダーにおいては、エンジニアではなくWebライターに外注することが多く、ライティングが必要となるページやボリュームによって費用は変動します。
レスポンシブ対応
レスポンシブ対応とは、パソコン及びスマートフォン、タブレット等のどのデバイスからホームページを閲覧したとしても、見やすいレイアウトに自動的に補正される機能のことです。近年では、パソコンだけでなくスマートフォンからインターネット閲覧をする人も増えてきたため、レスポンシブ対応を行うのが一般的であると言えます。
SEO対策・マーケティング
SEO対策とは、制作したホームページが検索エンジンの上位に表示されるように、特定のキーワードを選定したりすることです。既存のホームページをリニューアルする際には、現状のアクセス解析を行う等の作業も含まれるためある程度の費用となります。
マーケティングとは、ホームページのマーケティング戦略を立てたり、SNS広告等の運用のための項目であり、SEO対策と同様に制作したホームページの閲覧者を増やすためには欠かすことができない集客方法であると言えます。
HTMLコーディング
HTMLコーディングとは、エンジニアがプログラミング言語を使用してプログラミングコードを作成することであり、ホームページに動的な動作を加えたり、見える状態にしたりする専門的な作業のことです。対応ブラウザによって、費用は大きく異なります。ベンダーによっては、レスポンシブ対応もコーディングに含まれていることがあります。
多言語対応
ホームページを日本語だけでなく、グローバルに多言語対応したいという場合には、多言語対応にするための費用がかかることがあります。翻訳しつつ文法や単語に不適切な箇所はないか等のチェックに関する費用も多言語対応に含まれます。
環境構築・機能実装
ホームページ制作における環境構築とは、サーバー及びドメイン設定をはじめ、WordPressの導入やCMS構築等のことを指します。また、機能実装は、要件定義に従ってお問い合わせフォームを設置したり、中途採用の応募ページを設置したりすることを言います。ホームページ制作の見積もりには必ずと言っても良いほど記載される項目でしょう。
サーバー設定
前述した環境構築・機能実装をさらに細かく分類してサーバー設定だけで項目が記載されていることがあります。サーバーとは、簡単に言えば、ホームページのデータを保管しておく場所のことであり、サーバーを一から構築する場合にはある程度の費用となることが予想されます。
ドメイン設定
ドメイン設定についても、環境構築・機能実装を細かく分類して1項目で記載されていることがあります。ドメイン設定とは、URLのことであり、ホームページの住所のようなものです。企業のホームページであれば、独自ドメインを取得することになり、こちらも費用がかかります。
テスト
ホームページの制作が完了したらあらゆる機能をはじめとした動作確認のテストを行うことになります。搭載した機能の数やホームページの規模によってテストにかかる手間や時間は大きく異なるため、見積もり金額にも差が出ることになります。
運用講義
テスト後、クライアントのホームページ担当者にどのように更新していくのか等についてのレクチャーを行うのが運用講義です。もちろん良心的なベンダーであれば、不明点があれば納品後もサポートしてくれますが、基本的に日々の運用を行うのはクライアント側の担当者となります。
ただの企業紹介のホームページであれば、そこまで頻繁に何かすることはないかもしれませんが、ECサイトだったり、社長ブログ等ブログを更新したりする場合には、最低限の使用方法について認識しておく必要があります。こちらも、どれくらいの運用頻度によるのかや搭載した機能の数や複雑さによって費用が変動します。
マニュアル作成
運用講義と似ているようですが、こちらはデータ及び紙媒体でのホームページ運用マニュアル作成費を示しています。企業であれば、担当者の異動等も定期的に行われるだけでなく、部署ごとにホームページ内の担当が異なることもあり、膨大な人数がホームページ運用に関わる可能性もあります。そういった場合にベンダーにマニュアルを作成してもらうことが必要になると記載されることがあります。
ホームページ制作の見積書において注意するポイント
これまで、ホームページ制作の見積書に記載される項目についての詳細を解説致しましたが、ベンダーから渡された見積書をそのまま鵜呑みにしてしまっては、実は後から予想外の追加料金がかかるといったこと等により、予期せぬトラブルに発展してしまうことも予想されます。本項目では、クライアントがホームページ制作の見積書において注意するべき6つのポイントについて解説致します。
- 不明項目については質問し明確にする
- 見積書に未記載項目についてチェック
- 見積書だけでなく併せて提案書も提出してもらう
- 金額だけを見ずに目的を明確にする
- ベンダーのサポート体制の確認
- 1社ではなく複数社見積もりを行う
不明項目については質問し明確にする
ベンダーによっては、見積金額の算出方法が違っていたり、クライアント側から見て見慣れない専門用語等が見積書に羅列されているといったことも想定されます。理解できない専門用語があったり、費用に疑問を感じたりしたらどんな些細なことでも質問して、明確な答えを得るようにしましょう。
見積書に未記載項目についてチェック
見積書に記載されている項目だけ見て安心してはいけません。見積書に記載されていないことに関してこそチェックを行う必要があります。例えば、ベンダーの担当者は誰であるのか、ホームページ納品後の運用に関しては自社のみが行うのかベンダーが行ってくれるのか等について明確にしておくことで、不足していた部分に関しては、必要に応じて見積書を修正もしくは別途作成してくれることもあります。
見積書だけでなく併せて提案書も提出してもらう
ベンダーによっては、見積書と同時に提案書を提出してくれますが、提案書の提出がないベンダーも存在します。その際には、見積書をもらった段階で提案書も催促しましょう。見積書だけでは、成果物の具体的なイメージが付かないだけでなく、ベンダーの具体的な作業内容についてもイメージしづらいためです。
金額だけを見ずに目的を明確にする
見積もり金額だけでベンダーを決定するのも危険です。安いからと言って安易に決めてしまうのはもちろん、高いからと言って断るのも勿体ありません。自社が本当に求めるホームページの目的に合っているかを最優先事項とし、提案書と見比べつつアフターフォロー等も含めて総合的に判断する必要があるでしょう。
もちろん安いから悪いというわけではありません。安くても優良なベンダーは数多く存在します。ただし、あまりに安すぎると成果物のクオリティが低かったり、納期がかかってしまったりというリスクが大きくなることは必至です。
ベンダーのサポート体制の確認
見積書にホームページ完成後のサポート体制についての表記がない場合には、必ずアフターフォロー体制についての確認をしておきましょう。アフターフォローについては、別途金額設定されている可能性があるため、見積書記載の金額がクライアントの予算内だからと安心していたら、ランニングコストに予想以上に出費がかさんでしまったということになりかねません。
【相見積もり】1社ではなく複数社より見積もりを行う
ベンダーを最初から1社に絞り込んでしまうのは得策ではありません。あらかじめ3〜4社程度目星をつけ、相見積もりを行っておき、それぞれの見積もり金額や提案書を比較して、最も自社のニーズにマッチにしたベンダーを選定することが大切です。
ベンダーからの見積もりを安くしてもらうテクニック
ベンダーからの見積もり金額に疑問を感じてしまったとしても、成果物が無形の商材であることやクライアント側に専門的な知識が乏しいことから、値引き交渉を行うことは容易ではありません。無理に値引き交渉を行ってしまうと、本来必要だった費用を削ることからホームページのクオリティが下がってしまうこともあり得ます。本項目では、無理な値引き交渉を行わずとも、ベンダーからの見積もり金額を安くしてもらうことができる2つのテクニックについて解説致します。
- サイトマップの作成
- RFP(提案依頼書)の作成
サイトマップの作成
サイトマップ自体をクライアント側で事前に制作しておくことでページ数や構成内容が明確となり、より適正な見積もり金額に近づくことが期待できます。
サイトマップを作成するには、Microsoft PowerPoint及びGoogleスライドや、Microsoft Excel及びGoogleスプレッドシートを活用しても良いですし、下記のようなサイトマップ作成のためのツールも存在しているためぜひ活用してみて下さい。
- Adobe XD
- Cacco
- Lucidchart
RFP(提案依頼書)の作成
口頭や他者のホームページの具体例等だけで制作したいホームページのイメージをベンダーに伝えきるというのは非常に難しいため、いくらベンダーが丁寧なヒアリングを実施したとしてもクライアントのイメージと違う提案書ができあがってしまったり、曖昧な部分をカバーするため余裕を持った見積もり金額を提示されてしまったりすることがあります。
そうした誤差を生まないため、より適切な見積金額設定にするために明確なRFP(提案依頼書)の作成をクライアント側で行って、ベンダーに提出しておくと、よりわかりやすくベンダーと意思疎通を行うことができます。
まとめ
ホームページ制作の見積書について、本記事では、ホームページ制作の見積書に記載される項目の概要をはじめ、見積もり依頼前にやっておくべきこと及び注意するポイント等についても解説致しました。
専門的な知識が乏しいクライアントであればあるほど、ベンダーからの見積書については鵜呑みにせず、内容を精査し不明点についてはきちんと質問した上で、双方における認識の相違を避けることが大切です。自社の理想とするホームページをより適正な費用で制作するために、是非本記事を参考にしていただければ幸いです。