システム開発を円滑に進めていくために必要不可欠と言っても過言ではないプロジェクト体制図をご存知でしょうか。プロジェクト体制図はきちんと要点を押さえて作成しなければ、逆に開発の妨げになってしまうことも少なくありません。
そこで本記事では、プロジェクト体制図について、概要をはじめ、なぜ大切なのかや作成する際のポイントなどを徹底解説いたします。
プロジェクト体制図とは
システム開発におけるプロジェクト体制図とは、特定のプロジェクトに関して認識及び目的をメンバー全員と共有することで、各担当者の役割を明確にし、パフォーマンス向上を図ったり、予期せぬトラブルが発生したとしてもすぐにリカバリーできたりするように作成される体制図のことです。
プロジェクト内に存在するチームや指揮系統が明確になることで、いつ、どこで、誰が、何をしているのか、何をするべきなのか、何かあった時の責任の所在はどこあるのかが具体的に示されます。
システム開発においてなぜプロジェクト体制図が大切なのか
システム開発においてプロジェクト体制図がなぜ大切なのかというと、次の4つが挙げられます。
- プロジェクトメンバーの認識を揃えるため
- 指揮命令系統を明確にするため
- プロジェクトの説明が容易になるため
- 変更点があったとしてもわかりやすい
プロジェクトメンバーの認識を揃えるため
プロジェクト体制図があることで、何を目的としたシステム開発なのか、いつまでに開発するべきなのか、個々の役割はなんなのかなど、メンバーの認識が統一されます。また、万が一メンバーに変更があったり、予期せぬトラブルが発生したり、急な仕様変更があったりした場合に、プロジェクト内のチーム編成や担当の変更なども発生することもあり、こういった突発的な事象に対しても、リアルタイムで更新して内容を共有でき、臨機応変に対応することができるというメリットがあります。
指揮命令系統を明確にするため
プロジェクト体制図では、メンバーそれぞれの役割や指揮命令系統が明確に図で示されていることから、誰に何を報告すべきかが明確になります。もし、プロジェクト体制図がなければ、指揮命令系統がはっきりしないため、管理体制が複雑化かつ煩雑化してしまい、進捗の遅れや予期せぬトラブルに発展してしまいかねません。
プロジェクトの説明が容易になるため
プロジェクト体制図があれば、キックオフ会議などにおいて、プロジェクト全体像を明確かつ容易に説明することができるでしょう。プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、プロジェクト体制図がなければ、説明はおろか聞いている側もプロジェクトを理解できないという事態になってしまいます。
変更点があったとしてもわかりやすい
プロジェクト体制図を作成していれば、もし進行中になんらかの変更点があったとしても、リアルタイムで反映していれば、メンバー全員がすぐに理解し動けるというメリットがあります。ただし、変更点が生じたにも関わらずプロジェクト体制図をアップデートしなければ、混乱やトラブルの引き金となってしまうことがあるため注意しましょう。
プロジェクト体制図に記載されるポジション
プロジェクト体制図には、様々なポジションが明記されますが、中でも欠かせないものとして次の3つが挙げられます。
- プロジェクトオーナー
- プロジェクトマネージャー(PM)
- チームリーダー(TL)
プロジェクトオーナー
プロジェクトオーナーとは、その名の通り、プロジェクトの実施そのものを決定する者なおかつプロジェクトの発注者のことを指します。プロジェクト体制図においては、最も高い位置に記載され、プロジェクトを円滑に進行させ、成功させるために必要不可欠な存在です。
自社プロジェクトの場合には、後述するプロジェクトマネージャー(PM)の上司が指名されることが一般的ですが、クライアントから発注を受けて開発する場合にはクライアント側のメンバーがプロジェクトオーナーとなる場合もあります。
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトマネージャー(PM)とは、前述したプロジェクトオーナーが決定及び発注したプロジェクトを管理し、実質的にプロジェクトに対して責任を持つ存在です。プロジェクトが円滑にスケジュール通りに進んでいるかどうか、随時進捗状況を確認しつつ、コストや品質、メンバー、リスクなどの管理業務を担います。プロジェクト体制図においてはプロジェクトオーナーの次点に記載されるポジションです。
プロジェクトの進捗状況に応じて、資源や人材の追加投入、スケジュール修正などを行ったり、プロジェクトオーナーに適宜進捗状況の報告を行ったりします。その業務は多岐にわたることから、豊富な経験を積んだものが指名されることが一般的です。
チームリーダー(TL)
チームリーダー(TL)とは、プロジェクト内にいくつか存在するチームごとに据えられるリーダーのことです。各チームメンバーを統率しつつ、メンバーのモチベーションやパフォーマンスを向上させながら、プロジェクトを成功に導くために欠かせない存在です。プロジェクト体制図においては、前述したプロジェクトマネージャー(PM)の次点に各チームリーダー(TL)が記載されます。
プロジェクト体制図を作成する際のポイント
プロジェクト体制図を作成する際、押さえておくべきポイントとして、次の5つをご紹介いたします。
- プロジェクトの目的及び目標が決定してから作成
- シンプルにわかりやすくまとめる
- 指揮系統を1つにする
- 各ポジションの役割を明確にする
- なるべく1人につき1つの役割配置にする
- やむを得ない変更があった際には書き換えを行う
プロジェクトの目的及び目標が決定してから作成
システム開発を行うことになった段階でプロジェクト体制図を作成してしまうと、全ての工程を明確化することができず、結果的に意味のないものになりかねません。
そのため、プロジェクト体制図は、プロジェクトの目的及び目標がきちんと定まってから作成すべきです。目的及び目標がきちんと定まっていれば、コストや工程の無駄を省きつつ、適材適所にメンバー配置及びチーム配置することが可能となります。
シンプルにわかりやすくまとめる
当たり前のことですが、プロジェクト体制図は、誰がみても明確に理解できるよう、シンプルにわかりやすくまとめる必要があります。もし、チームやメンバーの役割が曖昧な場合、結局メンバーは誰に指示を仰げばよいのかわからなかったり、指揮する側が1人のメンバーにたくさんの指示を与えてしまったりしてしまう可能性があります。
指揮系統を1つにする
チームリーダー(TL)など、指揮系統は1つにすることも大切です。指揮系統が1つになっていなければ、メンバーは混乱してしまいます。プロジェクト体制図においては、必ず1つの線で指揮系統を明確にしましょう。
各ポジションの役割を明確にする
プロジェクト体制図において、各メンバー及びチームの役割は明確にしておかなければ、円滑にプロジェクトは進行しません。開発、品質、運用、テストなど、誰がみても役割がわかるような記載を心がけましょう。
なるべく1人につき1つの役割配置にする
コストや人材確保の条件にもよりますが、可能な限り1人につき1つの役割を配置するという意識を持つことが大切です。特にチームリーダー(TL)が兼任してしまうと、負担が多くなってしまい、予期せぬヒューマンエラーが起きてしまうこともあり得ます。
やむを得ない変更があった際には書き換えを行う
プロジェクトを進行する中では、どうしてもスケジュールの変更や、仕様変更、トラブル発生のためのリカバリーなど、様々な事象が発生することで、プロジェクト体制図にも変更が生じる場合があります。その場合には、必ずリアルタイムでプロジェクト体制図をアップデートし、常に最新の状態を維持しなければ、せっかく構築した管理体制が崩壊してしまうことに繋がりかねませんので注意が必要です。
プロジェクト体制図の作成や運用が便利になるツール
プロジェクト体制図を実際に作成する際に、作成及び運用が便利になるツールを5つご紹介いたします。
- XMind
- figma
- Miro
- Notion
- Mermaid
XMind
XMindとは、マインドマップの作成及びブレインストーミング機能を備えたアプリであり、世界で1億回以上もインストールされている実績を誇ります。無料版と有料版の2パターンが存在しており、もちろん有料版の方が使える機能は多くなっていますが、無料版でも最低限利用できるため、まずは無料版を試してみるのがおすすめです。
特性要因図(とくせいよういんず)/ 魚骨図、タイムライン、ツリーテーブル、組織図など様々な図を簡単に作成することができ、作成した後は優先順位及び進捗を示すようなアイコンをつけることもできるため、プロジェクト体制図を作成するのはもちろん運用にも便利であると言えるでしょう。
XMindは、すべてのプラットフォームに対応しているため、作成したプロジェクト体制図は、リンクを共有することで簡単にメンバーと共有することができるのも嬉しいポイントです。
XMind | https://jp.xmind.net |
figma
figmaとは、ブラウザ上で作業可能なデザインツールであり、自分が思った通りスピーディーに図形を用いながらプロジェクト体制図を作成することができます。作成したらすぐにブラウザ上で共有することができるのはもちろん、各メンバーにコメントツールを使用してプロジェクト体制図自体には編集を加えずに気になる箇所があれば随時コメントを入れてもらうことができるのも便利な点です。
また、PDF化することもできるため、メール添付してクライアントに渡すこともできます。
figma | https://www.figma.com/ja/ |
Miro
Miroとは、オンラインホワイトボードサービスであり、全世界で3,500万人も超えるユーザーが利用しています。オンライン会議などでリアルタイムでホワイトボードのように活用することはもちろん、様々なテンプレートが用意されていることから、プロジェクト体制図作成にもおすすめとなっています。
DropboxをはじめBox、Google Suite、JIRA、Slack、Sketchなどといったツールと連携できますが、後述するNotionと連携させることでさらに便利に運用可能です。
miro | https://miro.com/ja/ |
Notion
Notionとは、あらゆるワークフローを一元管理することができるクラウドツールのことであり、プロジェクト体制図の管理及び共有などにおすすめです。
前述した通り、Miroで作成したプロジェクト体制図を連携させることによって、リアルタイムの体制と必要なポジションをリアルタイムに可視化することができます。Miro上にある「必要なポジション」からNotionの「Job Description」ページにリンクさせると、メンバーの役割ごとに期待する役割及びMUST要件、WANT要件、NEGATIVE用件などを細かに確認することができ、とても便利です。
つまり、Miroで視覚的にわかりやすいプロジェクト体制図を 作成し、Notionで言語化するというイメージで運用すると良いでしょう。
Notion | https://www.notion.so/ja-jp |
Mermaid
Marmeidとは、プログラミング言語JavaScriptを基盤としたテキスト及びコードを利用してダイアグラムやビジュアライゼーションを作成することができるツールのことです。プログラミング技術がそこまで伴っていない場合でも少ないコードで特定の図形を描画することができるため、非常に便利と言えるでしょう。
前述したNotionでもMermaidが利用できるため、Mermaidでコードによる構造定義でプロジェクト体制図を描画しすることで、微調整の手間が省け、click構文でフロー中のノードにリンクを容易に貼ることができるようになります。
Mermaid | https://mermaid-js.github.io/mermaid/#/ |
まとめ
プロジェクト体制図について、本記事では、概要をはじめ、なぜ大切なのかや作成する際のポイントなどを徹底解説いたしました。
システム開発において、きちんと作成されたプロジェクト体制図は、プロジェクト成功のために欠かすことができない存在です。誰がみてもわかりやすいように、指揮系統を1つにし、常に最新の情報を保持しながらプロジェクト体制図を活用してシステム開発を進めていきましょう。