システム開発について

【知らないと損する】サーバーリプレイスで避けるべき落とし穴5選|費用削減&データ保護の秘訣も紹介

サーバーが遅い、よくフリーズする、セキュリティが不安…。

そんな悩みを抱えながら、サーバーリプレイスの費用や手間を考えると二の足を踏んでいませんか? 

しかし、古いサーバーを使い続けることは、業務効率の低下やセキュリティリスクなど、さらに大きな問題を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。

この記事では、サーバーリプレイスのデメリットを正しく理解し、適切な対策を講じることで、これらの問題を解決し、ビジネスを成長させるための具体的な方法をご紹介します。

この記事を読んでほしい人

  • 現在のサーバーに不満があり、サーバーリプレイスを検討している人
  • サーバーリプレイスの費用対効果やリスクについて知りたい人
  • サーバーリプレイスを成功させるための具体的なステップを知りたい人

この記事でわかること

  • サーバーリプレイスの5つのデメリットと、その対策
  • サーバーリプレイスを検討すべきタイミング
  • オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型それぞれのメリット・デメリット

サーバーリプレイスで立ちはだかる5つのデメリット

サーバーリプレイスには、おもに以下の5つのデメリットが考えられます。

  • コストがかかる
  • データ消失のリスクがある
  • システムを停止する必要がある
  • 互換性の問題が生じることがある
  • セキュリティリスクがある

これらのデメリットを事前に把握し、適切な対策を講じて、サーバーリプレイスのリスクを最小限に抑えましょう。

コストがかかる

新しいサーバーの購入費用だけでなく、データ移行費用、システム設定費用、テスト費用など、さまざまな費用が発生します。

特に、大規模なシステムのリプレイスでは、多額の費用が必要となることもあるので、事前にシミュレーションしましょう。

<内訳>

新しいサーバーの購入費用、OSやソフトウェアのライセンス費用、データ移行費用、システム設定費用、テスト費用、運用保守費用など

<削減方法>

クラウドサービスの利用、リース契約、中古サーバーの活用、不要な機能の見直しなど

データ消失のリスクがある

サーバーリプレイスに伴うデータ移行作業では、データの破損や消失のリスクが伴います。

重要なデータが消失すると、業務に深刻な影響を及ぼす可能性もあるので、注意が必要です。

<原因>

ヒューマンエラー、システムエラー、ハードウェア故障、サイバー攻撃など

<対策>

事前のバックアップ、データ移行ツールの利用、専門業者への依頼、移行後のデータ検証など

システムを停止する必要がある

サーバーリプレイス作業中は、システムを一時的に停止する必要があります。

システム停止により、業務に支障をきたすだけでなく、顧客や取引先にも迷惑をかける可能性があるので事前に周知し了承を得ましょう。

<影響>

業務停止による売上損失、顧客からのクレーム、取引先との信頼関係悪化など

<対策>

メンテナンス時間の告知、代替システムの用意、段階的なリプレイス、夜間や休日の作業など

互換性の問題が生じることがある

新しいサーバー環境では、既存のソフトウェアやアプリケーションが正常に動作しないといった互換性の問題が生じる可能性があります。

互換性の問題が発生すると、システムの修正や再構築が必要となり、追加の費用や時間がかかることもあるので、事前にリサーチが必要です。

<原因>

OSやミドルウェアのバージョン違い、ハードウェアのアーキテクチャの違い、ソフトウェアの依存関係など

<対策>

事前の互換性検証、仮想環境でのテスト、互換性のあるソフトウェアへの移行、システムの再構築など

セキュリティリスクがある

サーバーリプレイスは、セキュリティリスクが高まるタイミングでもあります。

新しいサーバー環境に不慣れなため、設定ミスやセキュリティホールが発生しやすく、サイバー攻撃の標的となる可能性もあることを覚えておきましょう。

<脅威>

不正アクセス、情報漏えい、データ改ざん、システム破壊など

<対策>

セキュリティポリシーの策定、セキュリティ設定の確認、脆弱性診断、セキュリティソフトの導入、セキュリティ専門家への相談など

サーバーリプレイスに適切な時期

以下の兆候が見られる場合は、サーバーリプレイスを検討する時期に来ている可能性があるので、早急にサーバーリプレイスを検討することをおすすめします。

  • ハードウェアの老朽化
  • パフォーマンスの低下
  • サポート終了
  • セキュリティリスクの増大
  • ビジネスの成長
  • コストパフォーマンスの悪化

サーバーリプレイスは、早すぎても遅すぎてもいけません。

適切なタイミングを見極めることが重要です。

ハードウェアの老朽化

サーバーのハードウェアが老朽化すると、故障のリスクが高まるため、サーバーリプレイスを検討する時期といえます。

ハードディスクの寿命(一般的に3〜5年)や、冷却ファンの劣化など、定期的なメンテナンスが必要な部品もあるだけでなく、メーカーの保守サポートが終了する時期も一つの目安となります。

パフォーマンスの低下

サーバーの処理速度が遅くなったり、頻繁にフリーズしたりする場合は、パフォーマンスが低下している可能性があり、サーバーリプレイスの時期といえます。

これは、ハードウェアの老朽化や、ソフトウェアのアップデートによる負荷増加、データ量の増大などが原因と考えられます。

サポート終了

サーバーのOSやソフトウェアのサポートが終了すると、セキュリティパッチの提供が終了し、セキュリティリスクが高まることから、サーバーリプレイスを検討すべきです。

また、新しいソフトウェアとの互換性がなくなる可能性もあります。

サポート終了のスケジュールは事前に確認し、計画的にリプレイスを進めることが重要です。

セキュリティリスクの増大

サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しており、古いサーバーはセキュリティリスクが高まります。セキュリティ対策ソフトのアップデートや、セキュリティパッチの適用など、セキュリティ対策を強化する必要がありますが、古いサーバーでは対応できない場合もあります。

ビジネスの成長

事業が拡大し、サーバーの処理能力が不足している場合は、リプレイスを検討する必要があります。

また、新しいサービスやアプリケーションを導入する際にも、サーバーのスペックが十分かどうかを確認しましょう。

コストパフォーマンスの悪化

ハードウェアの老朽化や故障頻度の増加により、修理費用や保守費用が増加し、コストパフォーマンスが悪化する場合があるため、サーバーリプレイスを検討してください。

新しいサーバーにリプレイスすることで、長期的なコスト削減につながる可能性もあります。

サーバーリプレイスを先延ばしにするリスク

サーバーリプレイスを先延ばしにすることで、以下のようなリスクが発生する可能性があります。

  • システム障害
  • セキュリティリスク
  • 機会損失
  • コスト増大
  • 業務効率の低下

サーバーリプレイスを先延ばしにしている方は、目を通してみてください。

システム障害

老朽化したサーバーは、故障のリスクが高まります。

また、システム障害が発生すると、業務が停止し、顧客や取引先に迷惑をかけるだけでなく、企業の信頼を失墜させる可能性もあるので、放置は厳禁です。

セキュリティリスク

古いサーバーは、セキュリティリスクが高まります。

サイバー攻撃を受けてしまうと、情報漏えいやデータ消失などの被害が発生する可能性があることを念頭におき、特に、個人情報や機密情報を扱う企業はサーバーリプレイスを検討しましょう。

機会損失

サーバーリプレイスを先延ばしにすればするほど、新しい技術やサービスを導入できず、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。

競合他社に遅れを取ることにもなりかねません。

たとえば、クラウドサービスを活用することで、より柔軟なシステム構築や運用が可能になりますが、古いサーバーでは対応できない場合があります。

コスト増大

サーバーリプレイスを先延ばしにすることで、新しいサーバーの価格が上昇する可能性があります。

また、故障したサーバーの修理費用や、セキュリティ対策費用など、余計なコストが発生することもあるので注意が必要です。

業務効率の低下

古いサーバーは、処理速度が遅く、業務効率を低下させる可能性があります。

結果的に従業員の生産性を低下させ、企業全体の業績に悪影響を及ぼすこともあるので軽視はできません。

3つの種類から最適な方法を選ぶ! サーバーリプレイス

サーバーリプレイスには下記の3種類があります。

  • オンプレミス型
  • クラウド型
  • ハイブリッド型

それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合ったリプレイス方法を選択することが重要です。

オンプレミス型

オンプレミス型は、従来型のサーバーリプレイス方法で、自社でサーバーを所有し、自社内に設置して運用します。

<オンプレミス型のメリット>

  • カスタマイズ性が高い:ハードウェアやソフトウェアを自由に選択・構成できるため、自社のニーズに合わせた最適なシステムを構築できる
  • セキュリティレベルを自由に設定できる:自社内でセキュリティ対策を徹底できるため、セキュリティレベルを自由に設定可能なうえ、機密性の高い情報を扱う企業にとっては、大きなメリットとなる
  • 既存のシステムとの連携が容易:既存のシステムとの連携が容易なため、スムーズなリプレイスが可能

<オンプレミス型のデメリット>

  • 初期費用が高い:サーバーの購入費用や設置費用など、初期費用が高額になる場合がある
  • 運用・保守に手間がかかる:ハードウェアのメンテナンスやソフトウェアのアップデートなど、運用・保守に手間と時間がかかり、専門の知識や人員が必要となる場合もある
  • 災害時のリスクが高い:地震や火災などの災害が発生した場合、サーバーが損傷し、データが消失するリスクがあり、バックアップ体制をしっかり構築する必要がある

クラウド型

クラウド型は、クラウドサービスプロバイダーが提供するサーバーを利用するリプレイス方法です。

<クラウド型のメリット>

  • 初期費用が低い:サーバーの購入費用が不要なため、初期費用を抑えられる
  • 運用・保守が容易:クラウドサービスプロバイダーが運用・保守を行うため、自社で手間をかける必要がない
  • スケーラビリティが高い:必要に応じてサーバーのスペックを柔軟に変更できるため、ビジネスの成長に合わせてシステムを拡張できる
  • 災害時のリスクが低い:クラウドサービスプロバイダーが堅牢なデータセンターでサーバーを運用しているため、災害時のリスクを低減できる
  • 最新技術の導入が容易:AIや機械学習などの最新技術を容易に導入できるため、ビジネスのイノベーションを促進できる

<クラウド型のデメリット>

  • カスタマイズ性が低い:オンプレミス型に比べて、ハードウェアやソフトウェアの選択・構成の自由度が低い場合がある
  • セキュリティレベルがプロバイダーに依存する:セキュリティ対策はクラウドサービスプロバイダーに依存するため、自社でセキュリティレベルを完全にコントロールできない
  • 既存のシステムとの連携に課題がある場合がある:既存のシステムとの連携に際し、APIの互換性やデータ形式の変換など、技術的な課題が生じる場合がある
  • インターネット回線の安定性が必要:回線が不安定な場合、システムの利用に支障が生じる可能性がある

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、オンプレミス型とクラウド型を組み合わせた、いいとこ取りのリプレイス方法です。たとえば、機密性の高いデータは自社で管理し、その他のデータやアプリケーションはクラウドで運用するなど、それぞれのメリットを活かした柔軟なシステム構築が可能です。

<ハイブリッド型のメリット>

  • オンプレミス型とクラウド型のメリットを享受できる:両方のメリットを活かし、自社のニーズに合わせた最適なシステムを構築可能
  • システムの特性に合わせて柔軟に構成できる:機密性の高いデータはオンプレミスで、処理能力が必要なアプリケーションはクラウドで運用するなど、柔軟な構成が可能
  • コスト削減:クラウドサービスの利用により、オンプレミス型に比べてコストを削減できる場合がある
  • BCP対策:オンプレミスとクラウドの両方でシステムを運用することで、災害時にも事業継続性を確保できる

<ハイブリッド型のデメリット>

  • システム構成が複雑になる:オンプレミスとクラウドの両方を管理するため、システム構成が複雑になり、運用・保守に手間がかかる場合がある
  • 運用・保守に専門知識が必要になる場合がある:オンプレミスとクラウドの両方の知識が必要になるため、専門の知識や人員が必要となる場合がある
  • セキュリティ対策の複雑化:オンプレミスとクラウドの両方でセキュリティ対策を行う必要があるため、セキュリティ対策が複雑になる場合がある

サーバーリプレイスを成功に導くためのステップ

サーバーリプレイスを成功させるためには、以下のステップを踏むことが重要です。

  • ステップ1. 現状分析:現状のサーバー環境を分析し、課題や問題点を洗い出す
  • ステップ2. 要件定義:新しいサーバーに求める要件を明確にします。性能、容量、セキュリティ、予算などを考慮する
  • ステップ3. リプレイス方法の選定:オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型の中から、自社のニーズに合ったリプレイス方法を選択する
  • ステップ4. ベンダー選定:実績、技術力、サポート体制などを比較検討しベンダーを選定する
  • ステップ5. リプレイス計画:詳細なリプレイス計画を策定します。スケジュール、作業内容、担当者などを明確にする
  • ステップ6. データ移行:既存のサーバーから新しいサーバーにデータを移行し、データのバックアップ、移行ツールの選定、移行後のデータ検証などを行う
  • ステップ7. システム設定:新しいサーバー環境に合わせて、システムの設定を行い、OSやミドルウェアのインストール、アプリケーションの設定、セキュリティ設定などを実施する
  • ステップ8. テスト:システムが正常に動作するか、機能テスト、性能テスト、セキュリティテストなどを行う
  • ステップ9. 運用開始:テストが完了したら、新しいサーバー環境での運用を開始しする
  • ステップ10. 運用保守:定期的なメンテナンスやアップデートを行い、システムを安定稼働させる

サーバーリプレイスに関するよくある質問

ここでは、サーバーリプレイスに関するよくある質問について、Mattockのシニアコンサルタントが回答していきます。

  • Q1. サーバーリプレイスのリスクは?
  • Q2. サーバーリプレイスをするときの注意点は?
  • Q3. サーバーのリプレイスは何年ごとに行うべきですか?
  • Q4. サーバーリプレイスにかかる費用は?

Q1. サーバーリプレイスのリスクは?

サーバーリプレイスには、費用負担、データ消失、システム停止、互換性の問題、セキュリティリスクなどのリスクがあります。

これらのリスクを軽減するためには、事前の計画と準備が重要です。

Q2. サーバーリプレイスをするときの注意点は?

サーバーリプレイスをするときは、目的を明確にし、適切なリプレイス方法とベンダーを選定することが重要です。

また、データ移行やシステム設定には細心の注意を払い、テストを十分に行う必要があります。

セキュリティ対策も万全にしておくことが大切です。

Q3. サーバーのリプレイスは何年ごとに行うべきですか?

サーバーの寿命は一般的に3〜5年といわれているものの、ハードウェアの老朽化やパフォーマンスの低下、サポート終了、セキュリティリスクの増大、ビジネスの成長など、さまざまな要因によってリプレイスのタイミングは異なります。

定期的な点検と評価を行い、適切なタイミングでリプレイスを検討することが重要です。

Q4. サーバーリプレイスにかかる費用は?

サーバーリプレイスの費用は、リプレイス方法、サーバーの規模、データ量、システムの複雑さなどによって大きく異なります。

  • オンプレミス型の場合:サーバーの購入費用や設置費用、ライセンス費用などがかかる
  • クラウド型の場合:月額利用料やデータ転送料などがかかる

まとめ|サーバーリプレイスのデメリットを乗り越え、未来への投資を

サーバーリプレイスは、企業のITインフラを刷新し、ビジネスの成長を支えるための重要なプロジェクトです。

しかし、費用負担やデータ消失のリスク、システム停止などのデメリットも存在します。

これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、サーバーリプレイスのリスクを最小限に抑え、成功させましょう。

また、リプレイスのタイミングや種類を慎重に検討し、自社のニーズに合ったリプレイス方法を選択することも重要です。

サーバーリプレイスは、単なるシステムの入れ替えではなく、企業の未来への投資ととらえ、慎重かつ計画的に進めることで、企業の競争力を高め、新たなビジネスチャンスを切り拓いてください。

サーバーリプレイスのお悩みはMattockにご相談ください

Mattockは、システム開発、アプリ開発、ベトナムオフショア開発、ラボ型契約、業務効率化コンサルティングなど、ITに関するさまざまなサービスを提供しています。

サーバーリプレイスに関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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システムテスト完全ガイド【2024年最新版】種類・流れ・UAT・トレンドを徹底解説

システムリリース後のトラブルは、企業の信頼を損ない、多大な損失をもたらす可能性があります。

システムテスト完全ガイドでは、このようなトラブルを未然に防ぎ、顧客満足度を高めるためのシステムテストの重要性と具体的な方法を解説します。

経営者には、テストへの投資がもたらすROI向上を、開発者には、テスト計画の立案から実行、そして最新トレンドまで、実践的な知識を提供するので参考にしてください。

機能テスト、性能テスト、セキュリティテストなど、各テストの目的と手法を理解し、最適なテスト戦略を構築することで、高品質なシステム開発を実現しましょう。

この記事を読んでほしい人

  • システム開発における品質保証に興味がある方
  • システムテストの基礎知識を習得したい方
  • システムテストの最新トレンドを知りたい方

この記事でわかること

  • システムテストの種類と目的
  • システムテストの流れと具体的な手順
  • システムテストの最新トレンドと活用方法

システムテスト(総合テスト)とは

システムテスト(総合テスト)とは、システム開発の中で実施されるテストの手法の一つです。

一般的にその他の単体テスト及び結合テストが完了したのちの開発工程における最終段階で実施されます。

システムテストでは、システムリリース後に実際に想定される状況と同様の条件下で動作確認を実施し、要件定義を問題なく満たしているか否かについて検証します。

この時点で問題がなければクライアントに納品となる流れをとりますが、もし不具合等が発見された場合には、システムの修正を速やかに行い、再度システムテストを実施することを覚えておきましょう。

システムテスト(総合テスト)と単体テストの違い

単体テストは、ユニットテストとも呼ばれるとおり、プログラムを構成する関数やメソッド毎の小さな単位が、それぞれの機能を正しく搭載しているか否かを検証する際に実施されるテストです。

システムテストはシステム開発の最終段階で実施されるのに対し、単体テストは、開発の比較的早い工程でその都度細かく実施されます。

システムテスト(総合テスト)と結合テストの違い

結合テストは、システムテストのさらに一段階前で行うテストで、単体テストよりはまとまった単位でありながら、システムテストのように全体のテストではない点が違いです。

結合テストは、ユニットごとの単体テストが完了した後、それぞれのユニットを結合した際に、要件定義どおり動作をするか否かについて検証をするテストのことです。

なお、結合テストは、次の4つの種類に分類することが可能です。

  • モジュール間結合テスト:モジュール結合時のテスト
  • サブシステム内結合テスト:サブシステム内の機能の結合時のテスト
  • サブシステム間結合テスト:サブシステム同士の結合時のテスト
  • 外部システム結合テスト:外部システム結合時のテスト

システムテスト(総合テスト)の種類

この章では、代表的なシステムテストの種類の概要を解説します。

  • 機能テスト
  • 構成テスト(機種テスト)
  • 回帰テスト(退行テスト、リグレッションテスト)
  • 性能テスト(パフォーマンステスト)
  • セキュリティテスト
  • ユーザビリティテスト
  • 障害許容性テスト
  • シナリオテスト
  • ロングランテスト

それぞれのテストの特徴を押さえておきましょう。

機能テスト

機能テストとは、要件定義されている仕様を満たしているか否かについて検証するテストです。

厳密にいえば、システムテストだけでなく、単体テストや統合テストにおいても実施されますが、要素のレベルにより、要件及び機能が変化することから、機能テスト自体の内容も連動して変化します。

構成テスト(機種テスト)

構成テスト(機種テスト)では、各ソフトウェア構成及びハードウェア構成に関連するシステムの検証を実施します。

具体的には、開発しているシステムの推奨環境において、画面表示及び動作が問題なく実施されるか否かを、実際のOSやスマートフォン端末等を用いてテストします。

回帰テスト(退行テスト、リグレッションテスト)

回帰テスト(退行テスト、リグレッションテスト)では、機能の追加及び変更、さらには発生していた不具合の改修のために行われたプログラム変更により、意図しない不可逆的な影響が発生していないかどうかを検証します。

性能テスト(パフォーマンステスト)

性能テスト(パフォーマンステスト)では、実際に開発したシステムを作動させて、要件定義を満たしているか否かについて検証します。

セキュリティテスト

セキュリティテストでは、その名の通り、開発したシステムへの外部からの不正アクセス防止及び情報漏洩防止等に代表されるセキュリティに関する機能が要件定義通り動作しているか否かを検証します。

特に不特定多数が使用することが想定されているシステム開発においては必須のテストです。

ちなみに、セキュリティテストでは、主に次の2点の対策を行うことが一般的です。

  • クロスサイト・スクリプティング(XSS):攻撃対象のWebサイトの脆弱性の隙をついて、攻撃者が悪質なサイトに誘導するスクリプトを仕掛け、Webサイトに訪れたユーザーの個人情報等を不正に搾取する攻撃
  • SQLインジェクション:攻撃対象のアプリケーションのセキュリティ上の不備を不正に利用し、本来アプリケーションが想定していないSQL文を実行させ、データベースシステムを攻撃者が不正に操作すること

ユーザビリティテスト

ユーザービリティテストでは、開発したシステムの操作性及び見やすさなど、ユーザー目線で使いやすいか否かを検証します。

クライアントによる受け入れテスト(UAT)でも、特に重要視される項目となるため、ていねいに実施しましょう。

障害許容性テスト

障害許容性テストでは、その名の通り、障害発生時であっても、任意の機能が維持されているか否かを検証します。

シナリオテスト

シナリオテストでは、ユーザーが実際に使用する手順を踏んで操作を行った際に、問題なく動作するか否かを検証します。

ロングランテスト

ロングランテストでは、あえて長時間システムを連続して稼働させることで負荷をかけ、システムのパフォーマンスが低下したり、動作自体が遅くなったり、停止したりしないかを検証します。

実際にユーザーが使用する際には、長時間使用されることが想定されるため、こちらも大変重要なテストです。

システムテストの流れ

この章では、実際のシステムテストの流れに沿って解説します。

  • ステップ1. 計画立案
  • ステップ2. テスト方針を立てる
  • ステップ3. テスト基準を設定する
  • ステップ4. 要員・体制を明確にする
  • ステップ5. スケジュールを計画する
  • ステップ6. テスト環境・ツールを定める
  • ステップ7. テスト環境を構築する
  • ステップ8. テスト項目を作成する
  • ステップ9. テストデータを事前に準備する
  • ステップ10. テスト手順を準備する
  • ステップ11. テストを実施する
  • ステップ12. 評価する

システムテストの種類について理解したところで、システムテストの流れについても押さえておきましょう。

ステップ1. 計画立案

システムテストを実施する際には、システム開発を行う前と同様にシステムテストを行うための計画を立てます。

具体的には、システムテスト全体の概要をはじめ、目的やテストの対象及び影響範囲、テスト環境や人員体制、テストの実施スケジュールを取りまとめつつ、システムテストの合格基準について定めます。

ステップ2. テスト方針を立てる

計画のうち、特にテスト方針では、どこまでのテストを実施し、どれくらいの品質を求めるのかについて定めます。

世間一般的にリリースする予定のスマートフォンアプリなどと、社会インフラ等を担うシステムでは、求められる品質が違います。

そのため、テストの工数を増やしてしまうとコストが増加してしまうこともあるので、開発するシステムが、誰に向けられており、どのような目的なのかについてきちんと把握しておくことが大切です。

ステップ3. テスト基準を設定する

計画を立てるうえで、テストの基準をきちんと設けることも大切です。

テスト方針にも関連しますが、どれくらいの品質を求めているのかによって、テストの基準も変動します。

ステップ4. 要員・体制を明確にする

テストを行う際の人員体制についてもきちんと明確にしておきましょう。

どのテストを行う際に、実施する担当者は誰であるのか、どれくらいの時間が想定されるのかをきちんと明確にしておかなければ、人日単価を算出することも不可能となります。

ステップ5. スケジュールを計画する

開発するシステムの最終納期に間に合うように、余裕を持ったテストスケジュールを計画しましょう。

もし、テスト段階で不具合があれば、改修が必要となり、その分工程が増えてしまいます。

スケジュールが伸びてしまうとクライアントにも迷惑がかかってしまうので注意しましょう。

ステップ6. テスト環境・ツールを定める

テストを行う環境やルールについてもきちんと定めておく必要があります。

ユーザーが使用する推奨環境を整えて、実際の使用状況で問題なく動作するか否かを検証できなければテストの意味がありません。

ステップ7. テスト環境を構築する

計画した通りのテスト実施環境を構築し、どの担当者であっても同条件下でテストを実施できるように準備します。

この段階では、くれぐれも担当者毎に異なるテスト環境にならないように注意する必要があります。

ステップ8. テスト項目を作成する

テストを行う前に、今一度計画に沿ってテストを実施する項目について、誰でも一眼でわかるようにしておきます。

この段階では、それぞれの項目で何を確認するのかについても細かく書き出しておきましょう。

ステップ9. テストデータを事前に準備する

テストに用いるデータを事前に準備しておき、スムーズにテストを実行できるようにしておきます。

ステップ10. テスト手順を準備する

計画書の手順通りにテストを実施できるように、テストの手順についてもしっかり準備しましょう。

ステップ11. テストを実施する

テスト手順準備まで完了したら、実際にテストを実施していきます。

ステップ12. 評価する

テスト実施後、各テストについて評価を行い、計画通りかつ要件定義通りの結果となっていれば合格としますが、何らかの不具合が起きている場合には、不合格とし、早急に改修を行い、再度テストを実施します。

受け入れテスト(UAT)とは

受け入れテスト(UAT)とは、ベンダー側で実施されたシステムテストの後、クライアント側が実際に運用する環境において、実際の使用手順に沿って開発されたシステムを使用してみるテストのことです。

もちろんベンダー側でも実際の使用環境を整えてテストを行っていますが、クライアントが実際に使用してみることで、何か操作を間違ってしまった際などに、エラー表記などを見て、クライアントが対処することができるのか否かについても細かく検証していきます。

基本的には、受け入れテストについては、プロジェクトの初期段階で計画しておくことが一般的です。

初期段階で計画を行なっておくことで、クライアントとベンダーの間での要求定義の認識をきちんと擦り合わせておくことができ、不要なトラブルを予防することにつながります。

受け入れテスト(UAT)の種類

ここでは代表的な次の3つの受け入れテストについて解説します。

  • 運用受け入れテスト
  • 契約による受け入れテスト
  • 規定による受け入れテスト
  • アルファ・ベータテスト

システムテスト同様、受け入れテスト(UAT)にもさまざまな種類が存在しているので、押さえておきましょう。

運用受け入れテスト

運用受け入れテストでは、クライアント側のシステム管理者によって、システム運用に支障がないか否かを以下のようにして検証します。

  • バックアップを取る
  • リストアを行う
  • 不測の事態(災害時など)において、スムーズに復旧を行うことができるのかについての検証を行う
  • セキュリティ上何か重大な問題はないかの検証を行う
  • ユーザー管理を問題なく実施可能であるか否かを確認する

この段階では、クライアント側においてもシステム関係に詳しいであろうシステム管理者がテストを実施することが多いので、よほどのことがなければスムーズに進むことがほとんどです。

契約による受け入れテスト

契約による受け入れテストでは、システム開発外注の段階で結んだ契約書に記載の内容を満たしているか否かを確認します。

契約書通りのクオリティであるのかといったことや、納期が遅れていないかという点についての確認です。

規定による受け入れテスト

規定による受け入れテストでは、実際にユーザーが開発されたシステムを使用する際に、法律及び安全基準などから逸脱していないかどうかを検証します。

この際、開発されたシステムによって、特に会計分野や医療分野、さらには個人情報に関するセキュリティなど、さまざまな分野の法律及び安全基準を細かく確認する必要があります。

アルファ・ベータテスト

アルファ・ベータテストにおいては、実際にシステムを使用する現場のユーザーや、コンシューマなどにモニターとしてシステムを使用してもらったうえで、率直なフィードバックを受けます。

操作感や画面表示をはじめ、実際に使用した際に、予期せぬ不具合が発生しないかなどを確認するのです。

この段階では、運用受け入れテストと異なり、システムに詳しくない人間が実際に使用することになるため、システムテストや運用受け入れテストでは発見されなかった不具合などが発見されることがあります。

システムテストの最新トレンド

この章では、システムテストの最新トレンドをご紹介します。

  • AIを活用したテスト自動化
  • シフトレフトテスト
  • クラウドを活用したテスト環境
  • テストデータ管理の重要性

システム開発において、品質保証は欠かせません。

システムテストは、その品質保証を担う重要なプロセスですが、近年、技術の進歩とともに、システムテストのトレンドも大きく変化しています。

AIを活用したテスト自動化

AI(人工知能)の進化は、システムテストの自動化を新たなステージへと導いています。

従来のテスト自動化では、スクリプト作成やメンテナンスに手間がかかるという課題がありました。

AIを活用することで、テストケースの自動生成やテスト結果の分析を効率化し、人的リソースの削減とテストカバレッジの向上を実現できます。

<例>

  • 機械学習を用いたテストツール:過去のテスト結果やシステムの振る舞いから、効果的なテストケースを自動生成する
  • AIによる画像認識技術:UIテストの自動化にも応用されている

シフトレフトテスト

シフトレフトテストとは、テスト工程を開発の早期段階に前倒しするアプローチです。

開発の後期段階でバグが見つかると、修正コストが大きくなるだけでなく、リリーススケジュールにも影響を及ぼします。

シフトレフトテストは、開発の初期段階からテストを繰り返し行うことで、早期にバグを発見し、修正コストの削減と品質向上を目指します。

<例>

  • 開発者がコードを記述するたびに、静的解析ツールでコードの品質をチェックする
  • 単体テストを自動実行したりする

クラウドを活用したテスト環境

クラウド環境は、システムテストのインフラ構築と運用を効率化する上で、ますます重要な役割を果たしています。

オンプレミス環境でのテスト環境構築は、時間とコストがかかるだけでなく、スケーラビリティにも課題があります。

クラウド環境を利用することで、必要な時に必要なだけリソースを確保でき、テスト環境の構築・運用コストを削減可能です。

<例>

  • AWSやAzureなどのクラウドプラットフォーム:さまざまなテストツールやサービスを提供しており、システムテストの効率化に貢献している

テストデータ管理の重要性

テストデータの品質は、システムテストの結果に大きく影響します。

現実のデータを模倣した高品質なテストデータは、システムの潜在的な問題をより正確に明らかにするのに役立ち、不適切なテストデータは、誤ったテスト結果を招き、品質問題を見逃すリスクを高めるからです。

<例>

  • 個人情報や機密情報を含むテストデータ:適切に匿名化・マスキング処理を行う必要がある
  • テストデータ生成ツール:効率的に高品質なテストデータを用意できる

システムテストに関するよくある質問

ここからは、システムテストに関するよくある質問にMattockシニアコンサルタントが回答します。

  • Q1. システムテストは別名何といいますか?
  • Q2. システムテストと機能テストの違いは何ですか?
  • Q3. システムテストは必要ですか?
  • Q4. システムテストとはIT用語で何ですか?
  • Q5. STとはITで何ですか?
  • Q6. システムテストとシステム結合テストの違いは何ですか?
  • Q7. システム開発のテストは誰がやるのですか?

この章を参考に、システムテストについて理解を深めておくことをおすすめします。

Q1. システムテストは別名何といいますか?

システムテストは、総合テストと呼ばれることもあります。

どちらも同じ意味で、システム全体が要件を満たしているかを確認するテストを指します。

Q2. システムテストと機能テストの違いは何ですか?

機能テストは、システムの個々の機能が正しく動作するかを確認するテストですが、システムテストは、システム全体を統合した状態で、機能だけでなく、性能、セキュリティ、ユーザビリティなど、さまざまな観点からテストを行う点がそれぞれのテストの違いです。

Q3. システムテストは必要ですか?

システムテストは必要不可欠です。

システムテストを実施することで、システム全体の品質を保証し、本番環境での問題発生を未然に防げます。

Q4. システムテストとはIT用語で何ですか?

システムテストとは、IT用語でシステム全体が要求仕様通りに動作するかを確認するためのテストを意味します。

Q5. STとはITで何ですか?

STは、システムテスト(System Test)の略称として使われることがあります。

Q6. システムテストとシステム結合テストの違いは何ですか?

システム結合テストは、システムを構成する複数のモジュールやコンポーネントを結合し、それらの間のインターフェースや連携が正しく動作するかを確認するテストです。

システムテストは、システム結合テストの後に行われ、システム全体を統合した状態でテストを行います。

Q7. システム開発のテストは誰がやるのですか?

システム開発のテストは、開発チーム内のテスターや、独立した品質保証チームが担当することが多い傾向にあります。

また、近年では、開発者自身もテストに積極的に関わるようになってきています。

まとめ

システムテストについて、この記事では、「システムテスト完全ガイド」と題し、システムテストの種類や流れ、受け入れテスト(UAT)についても解説しました。

システム開発の工程の中でも最終段階にあるシステムテストおよび受け入れテスト(UAT)は、問題なくシステムが要件定義通りに開発されているかを確認するために欠かすことができない工程です。

特にシステムテストで手を抜いてしまうと、受け入れテスト(UAT)時にクライアントとベンダーの間でトラブルになってしまうことにつながりかねません。

ベンダーにおいて実施されるシステムテストにおいては、きちんと計画を立て、求められるクオリティのシステムが開発されているかどうかをていねいに検証することが大切です。

この記事を参考に、スムーズなシステムテストを実施してください。

【システム開発の仕様書とは?】仕様書の種類や書き方、仕様書作成の際押さえておくべきポイント、仕様書作成に役立つツール4つも徹底解説!

システム開発及びアプリ開発において、計画的かつ効率的に開発を進めていくために作成される各種仕様書。この仕様書の作成を怠ってしまうと、開発中に仕様変更が発生し、工数の増加だけでなく納期の延長等様々な弊害も生まれてしまうでしょう。さらに仕様書を作成することで、クライアントとベンダーの間に認識の齟齬がないようにすることも可能です。

そこで本記事では、システム開発及びアプリ開発の仕様書に焦点を当て、仕様書の種類や書き方を始め、仕様書作成の際押さえておくべきポイントについても徹底解説致します。

仕様書とは

システム開発アプリ開発で作成される仕様書は、開発者の説明書にあたる書類です。具体的にはどの部分にどのような機能を搭載するのかといったことや、どこを基準にどのような形で遷移させるのかといったことを記載してあり、要求定義された要求を必ず満たしていることが求められます。

仕様書と設計書の違い

各フェーズごとに仕様書とセットで作成される設計書と仕様書を混同して捉えてしまう方も少なくありませんが、仕様書は成果物のイメージを資料にしており、設計書は制作の工程を資料としています。

仕様書と使用説明書の違い

使用説明書も設計書同様仕様書と混同してしまっている方が多い資料です。使用説明書とは、その名の通り、成果物の使い方について解説されているものであり、設計書及び仕様書とは切り分けて考える必要があります。

仕様書の種類

システム開発及びアプリ開発に必要となる仕様書は1種類だけでなく、様々な種類が存在します。本項目では、代表的な次の5つの仕様書の種類について解説致します。

  • 要求仕様書
  • 機能仕様書
  • 技術仕様書
  • API仕様書
  • テスト仕様

要求仕様書

要求定義仕様書は、クライアントが求める成果物の要望に沿って、どう対応を行うのか、費用はどのくらいなのか、納期予定はいつであるのか等を記載する仕様書のことでありながら、クライアントの折衝に使用したり、プロジェクトメンバーへの指示書として使用されたりする資料のことです。

要求仕様書がなければ、クライアントとベンダーの間でイメージしている成果物に大きな差が生じていないか等を視覚的に確認することは難しく、必ず作成するべき仕様書の1つと言えます。

機能仕様書

機能仕様書とは、開発するシステム及びアプリの動作について記載した資料のことです。前述した要求仕様書を基に、クライアントの要望に対してどのような機能を搭載することで成果物を完成させるのかをまとめます。この機能仕様書の中には、画面設計書や機能の一覧表等も含まれることがあり、プログラマーが機能仕様書を見ただけで開発をスムーズに進めていけるくらい、誰であっても理解しやすい内容にする必要があります。

技術仕様書

技術仕様書とは、前述した機能仕様書で記載された各機能を開発するための手法について記載された資料のことです。ただし、搭載する全ての機能に対して仕様書を作成せずとも、特に必要だと思われる機能にのみ作成するといったことでも問題ありません。

API仕様書

APIとは、英語表記で「Application Programming Interface」の頭文字を取ったものであり、外部のソフトウェア及びWebサービスを利用するための仕組みのことを言います。

API仕様書とは、API利用について手順を記載した書類となっており、具体的にはAPIエンドポイントをはじめ、パラメータ、得られる結果等が記載されていることから、API利用を行う上では必須とも言える仕様書です。

テスト仕様書

テスト仕様書とは、クライアントの要求をヒアリングして作成した要求定義書記載に違わず動作を行うかどうかについて、テストを行うポイントをまとめた書類のことです。具体的には、単体テスト及び結合テストにおいて、搭載したどの機能を何のテスト技法を用いてテストするのかについて記載されています。

仕様書を作成する際押さえておくべきポイント

本項目では、各種仕様書を実際に作成する際、これだけは押さえておくと誰でも理解しやすい仕様書になるという押さえておくべき6つのポイントについて解説致します。

  • イメージ画像及び図を活用
  • 画面遷移図がわかりやすい
  • シーケンス図がある
  • 5W1Hに沿って記載
  • 可能な限り詳細を記載
  • ツール及びテンプレートを活用

イメージ画像及び図を活用

全て文章だけで構成された仕様書はとてもわかりにくくなってしまいます。仕様書を作成する際のルールには、特に文章だけで作成しなければいけないというものはないため、積極的にイメージ画像及び図を用いるように意識しましょう。

特にクライアントからヒアリングを行って作成する要求仕様書については、成果物のイメージが視覚的にできるようにし、専門的な知識が乏しいクライアントであっても明確に成果物をイメージできるようにする工夫が必要です。要求仕様書の理解が曖昧なまま開発が進み、成果物を納品してしまうとクライアントが当初イメージしていたものと違うといったトラブルに発展してしまう可能性も少なくありません。

画面遷移図がわかりやすい

画面遷移図とは、別名画面展開フローとも称され、システムやアプリの画面に表示される順序をはじめ、画面同士の関連について視覚的に理解しやすく図解したもののことを言います。

成果物を実際に使用するユーザーの行動及び導線を予測することで、予期せぬトラブル発生を防ぐことができるため、作成に時間がかかるからと後回しにせず、初期の段階でしっかりとした画面遷移図を作成しておきましょう。

シーケンス図がある

シーケンス図とは、プログラムの処理の流れ及び概要を設計する際に用いられる図のことで、時間軸に沿ったクラス・オブジェクトの間のやりとりについて視覚的に表現することが可能です。こちらも画面遷移図同様、作成するのには手間や時間がかかってしまいますが、開発上の認識齟齬が発生するのを防ぐためには、必要不可欠な仕様書であるため、必ず作成するようにしましょう。

5W1Hに沿って記載

5W1Hは、ご存知の通り下記英単語の頭文字を取ったものであり、仕様書を5W1Hに沿って構成することで、非常にわかりやすいものとなります。

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:誰が
  • What:何を
  • Why:何故
  • How:どのように

上記を仕様書に落とし込むと、開発するシステムの納期をはじめ、どのオフィスでどのプロジェクトメンバーがどのようなシステムを何のために、どのような技術を使用して開発するのかということがわかるように意識して記載していくことで、誰であっても理解が容易な仕様書となります。

また、システムに関する専門的な知識の乏しいクライアントが読むような要求仕様書については、専門的な単語を使用するのを控えるといった気遣いも大切です。

可能な限り詳細を記載

可能な限り詳細について記載した仕様書を作成することを意識することで、スムーズかつ効率的にシステム開発及びアプリ開発を進めることが可能です。曖昧な部分が多い仕様書であれば、結果的に詳細について実務担当者であるプロジェクトメンバーから逐一質問されることになり、その都度時間を取られることになってしまいます。さらに、その質問に対しての回答は大抵の場合、口頭でなされることが予想されるため、誰にどのように答えたかというログも残りにくくなります。

その結果、予期しないトラブルが発生したり、本来の開発意図が伝わらず、要求仕様書とずれた成果物が完成してしまったりといったことに繋がりかねません。このような事態に陥らないためにも、詳細部分まできちんと記載された仕様書を作成しておく必要があります。

ツール及びテンプレートを活用

システム開発及びアプリ開発において、仕様書を作成することはとても重要ではありますが、仕様書の作成ばかりに時間を取られてしまうのは本末転倒です。本来力を入れたいシステム開発に時間を割くためにも、仕様書を作成するためのツール及びテンプレートを積極的に活用することで、要点をまとめつつわかりやすい仕様書を効率よく作成しましょう。

要求仕様書の書き方

システム開発及びアプリ開発において、一番最初に作成する要求仕様書を作成する際の工程は大きく次の4つのフェーズに分割することが可能です。

  1. 要求収集
  2. 要求分析
  3. 要求定義(要件定義)
  4. 要求仕様記述

1.要求収集

要求収集では、クライアントから開発したいシステム及びアプリについて、開発する目的を始め、どのような機能を搭載したいのか、開発後の目標は何なのか等について、詳細なヒアリングを行います。直接インタビューを行ったり、アンケートを行ったりして、クライアントの要望について齟齬がないように汲み取ることが必要です。

2.要求分析

要求分析では、クライアントから収集した様々な要求について、矛盾していないかということや、抜けがないかということについて分析を行います。その際、なるべく複数人であらゆる視点から分析を行うことが大切です。

さらに可能な限りクライアントとイメージが一致しているかどうか確認するためにも、視覚的に成果物を理解できるような資料を作成したり、プロトタイプを開発したりといった工夫が後のトラブル防止に一役買うことになります。

3.要求定義(要件定義)

要求定義(要件定義)では、プロジェクトメンバーに対し、クライアントからの要求が理解できるような資料を作成します。この段階では、なるべく詳細に資料を作り込む必要があるのである程度時間を割き、丁寧に詰めていく必要があります。

4.要求仕様記述

要求仕様記述は、要求仕様書作成の最終工程であり、要求及び設計の橋渡しとなるような文書を作成します。具体的に記載するべき項目は下記のようなものが挙げられます。

  • 要求の概要
  • システム及びアプリの目的
  • 現状の課題及び改善案
  • 基本要件及び優先順位
  • 到達目標
  • システムの実現の手段
  • システム化する範囲
  • 概略コスト
  • 効果(定性/定量)
  • 体制図
  • 概略スケジュール

要求の概要

要求の概要では、その名の通り、クライアントの要望の概要についてまとめます。

システム及びアプリの目的

システム及びアプリの目的では、システム及びアプリを何故開発するのか、どのような目的で開発するのかについてまとめます。

現状の課題及び改善案

現状の課題及び改善案では、システム及びアプリがない現状における課題を洗い出し、その課題を解決することが可能な改善案(搭載する機能)について記載します。

基本要件及び優先順位

基本要件及び優先順位では、本プロジェクトにおいて、基本的に満たすべき要件と優先順位をつけていきます。特にシステム開発においては、クライアントの全ての要望を完全に実現するということは困難である場合が多く、そのため、優先順位をつけることで、なるべく要望に近いシステムを開発できるように努力していくことになります。そのため、開発に着手する前の段階で要求仕様書に明記しておきます。

到達目標

到達目標とは、開発するシステム及びアプリの目的ではなく、システム開発上の目標を定義しておくことです。例えば、ミスを通常の想定よりも30%削減するといったような具体的な目標です。近年では、人員削減や残業数の削減等が記載されることも多くなってきています。この到達目標を最初に設定しておくことで、プロジェクトメンバー全員の意識を統一し、効率的にシステム及びアプリ開発を進めていくことができると言われています。

システムの実現の手段

システムの実現の手段では、本プロジェクトで開発するシステム及びアプリについての全体構想を記述し、クライアント及びプロジェクトメンバー全員が成果物の概要について共通認識を持てるような資料とします。

システム化する範囲

システム化する範囲では、前述した基本要件及び優先順位に沿いながら、実際に成果物に搭載する機能を明記します。同時に今回搭載しない機能についてもきちんと明記しておかなければ、後々クライアントとの間でトラブルに発展してしまうことに繋がり兼ねませんので注意が必要です。

併せて搭載しない機能は、何故搭載しないのかといった理由や、搭載せずとも代替する方法があるのかといったことをきちんと明確にし、クライアントに説明できるようにしておきましょう。

概略コスト

概略コストとは、本要求仕様書に則り、概略のコストを見積もり記載することです。クライアントはこの金額を見て、このシステム及びアプリ開発を進めるのか、それとももう少し搭載機能を絞る等して、コストを抑えるのか等のジャッジを行った後、クライアントから了承を得ることができればそこで初めてプロジェクトが発足し、開発がスタートします。

効果(定性/定量)

効果(定性/定量)では、本プロジェクトで開発するシステム及びアプリによって、どのような具体的な効果があるのかについて具体的に記載します。

定性効果とは、数値では表すことができない効果のことであり、定量効果とは数値及び金額で表すことが可能な効果のことです。ここでは、どちらの効果も想定できる限り記載することが大切です。効果が少なければ、クライアントもコストをかけてまでシステム及びアプリ開発をすることはないと考えてしまうためです。

体制図

要求仕様書における体制図においては、プロジェクトを完遂させるために、ベンダー及び外注会社がどのように関わるのか等を図で示します。実際にプロジェクトが発足した段階では、さらに詳細な担当者名を記載できるとなお良いでしょう。

概略スケジュール

概略スケジュールでは、開発するシステム及びアプリについて、無理なく実現可能かつ具体的な納期を記載します。クライアントとしては、早ければ早いほど良いということになることが大半ですが、クライアントの要望通りの納期にしたところで、結局納期が延びてしまっては元も子もありません。そのため、スケジュール立案段階では、余裕を持ちつつ最短のスケジュールを記載するようにしましょう。

機能仕様書の書き方

システム及びアプリ開発における機能仕様書には、主に次の9つの項目を記載します。

  • 表紙
  • 改訂履歴
  • 目次
  • 用語説明
  • システム
  • 機能策定方針
  • 機能概要
  • 機能仕様
  • 非機能仕様

表紙

表紙はその名の通り、機能仕様書の表紙であり、一般的にはタイトル「〇〇システム/アプリ機能仕様書 ver.1.0」と、所属部署及び名前等を記載します。

改訂履歴

改訂履歴のページも設けておき、改訂日付や改訂者の名前、及び改訂の内容を記載します。

目次

目次では、文字通り項目及び該当ページ数を明記します。

用語説明

用語説明では、機能仕様書で用いる用語についての定義を明記します。

システム

システムでは、開発するシステム及びアプリの概要及び、サーバーやドメイン等の構成、開発環境や動作環境、プログラミング言語等について明記します。

機能策定方針

機能策定方針では、発生したエラーに対しての処理方法について等に対して記載します。具体的には、Aというエラーが発生した場合には処理を続行するが、Bというエラーが発生した場合には処理を続行しないといったような内容です。

機能概要

機能概要では、開発するシステム及びアプリが持つ機能について概要を明記します。

機能仕様

機能仕様では、前述した機能概要で挙げた各機能について、より具体的に詳細を記載します。

非機能仕様

非機能仕様では、機能以外に関する性能等の使用を明記します。

仕様書作成に役立つツール 4選

システム及びアプリ開発の仕様書を0から作成していると大変な手間と労力がかかるため、本項目では、仕様書作成に役立つツールについてご紹介致します。

  • Microsoft PowerPoint
  • cacco
  • Moqups
  • Prott

Microsoft PowerPoint

Microsoft PowerPointであれば、普段から使い慣れている方も多い上、標準搭載されているPCも多くあるため、一番身近なツールであると言えます。手軽に表や図を挿入することもできることや、共有することも容易であることがメリットでしょう。

cacoo

Cacco(カクー)とは、株式会社ヌーラボが提供しているフローチャート及びワイヤーフレーム等の図を簡単に作成し、なおかつ安全に共有することが可能なオンライン作図ツールです。日本語に対応しており、無料版と有料版があるため、まずお試しで使ってみたい方は無料版を試してみることをおすすめします。

オンライン作図ツールcacoohttps://cacoo.com/ja/?gclid=CjwKCAiAprGRBhBgEiwANJEY7KkqTPL1X47CX93WJQ2AvPsFrPSJ6f5uwlO6X4IpYgRtNNgqTYZjGxoC-lwQAvD_BwE

Moqups

Moqupsは、ブラウザベースのWeb制作イメージ共有ツールのことです。日本語ではなく、英語で説明がされていますが、基本的にはドラッグ&ドロップによる操作で直感的に操作することが可能であるため、人気のツールとなっています。無料版及び有料版があり、無料版では1プロジェクトしか作成できないため、有料版がおすすめです。

Moqupshttps://moqups.com

Prott

Prottとは、コーディングしなくても本物のようにアプリを再現することができるプロトタイピングツールです。仕様書のみだとクライアントに伝わりにくいと悩んでいる方は、Prottを活用することで、クライアントとベンダーの間のイメージを共通のものにしやすくなるでしょう。

Protthttps://prottapp.com/ja/

まとめ

システム及びアプリ開発の仕様書について、本記事では、システム開発及びアプリ開発の仕様書の種類や書き方を始め、仕様書作成の際押さえておくべきポイントについても徹底解説致しました。

システム及びアプリ開発をスムーズに行い、クライアントの要望を実現させるために、丁寧な仕様書の作成は必須です。本記事を参考にしていただき、様々なツールを駆使しながら、効率的にわかりやすい仕様書を作成し、システム及びアプリ開発に活かしていただければと思います。